まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

はい、おばさんです。

今週のお題「卒業」

 

わたしはもう若くない。卒業を経験した。

 

仕事帰りに美容院を予約していた。オシャレな若者が集うそこは、ここ半年のお気に入り。ショートカットだからと言い訳して、月に一度、足しげく通う。今日のカラー担当は20歳くらいのイケメンくん。気にならないふりをして雑誌を読んでいると「今日はもう晩ごはん食べたんですか?」と彼。時間は20時。「いえ、まだですよ」と普通に答える。「家で何か作ってきてるんですか」とさらに彼。「いえ、主人も飲みに行くらしいのでどうしようかなと…(本当です)」「そうですか…」「(え?終わり?)あの何か…?」「あ、いや、実はちょっとした悩みがあって…」この時私は、雑誌なんてほっぽらかして彼の話を聞く体制になっていた。うーん、見れば見るほどかわいい顔。「悩みって?」「いや、そのぼく…若い子が作ったごはんが苦手なんです。理由はわかんないんですけど、どうしても彼女が作ったお弁当とかダメなんです」

 

(え?)彼の悩みも不思議だけど、妻でもない彼女が彼氏にお弁当を作るの?その事実を受け入れるのに必死になる私。とりあえず、「えー、どうして?そんなの聞いたことないな」と返答。「ですよね…彼女のお母さんが作ったものなら大丈夫なんです。だから僕、結婚できないんじゃないかって…」

 

そうかぁ。彼は彼女と結婚したいのかぁ。しかし、よくわからない悩みだな。答えを言ってあげられないまま、カラー終了。その途端、質問したことなんて忘れたかのようにササッと立ち去る彼。一人残され、まだ悶々とする私。お姉さんとして、何かアドバイスできることが、あるはず…!

 

しかし、10分後全く別の答えに行き着いてしまった。そもそも彼は、なぜ私にこんな話をしたの?もしかして、彼にとって私はお母さんみたいだから、私の作るごはんが気になったということ?はうー!!なんということに気付いてしまったんだ。

 

目の前にある鏡で、自分の姿を確認する。頭から湯気は出ていない。よし、落ち着こう。そうよね、教えてくれた彼に感謝しよう。これからは、若ぶらずに謙虚に生きていくわ。主人のお弁当もめんどくさがらずに作ろうっと。主人はいつだっておいしいと言って食べてくれるもんね。

 

はい、若いわたし卒業!!