まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

13年前の春に届け ~手紙~

新入社員になって13回目の春を迎えます。これからどう生きようか、悩みます。そこで当時のわたしに手紙を書くことにしました。途中まで本当の話です。最後はどうなるのか・・・お楽しみに・・・★

f:id:kinandun:20150405145440j:plain


ひさしぶり。新入社員のわたし。とりあえず、就職できたね。地元にも戻れたね。あなたはこれから、嫌な上司にあったり、アルバイトに説教されたり、隣のおじさんにどなりこまれたりします。それでもお客様からの「ありがとう」を励みにがんばります。そして「広告を作る」楽しさを覚えます。上司がお休みのときは、お店にたった一人。でも心細くなんてありません。だって、好きな広告を思いっきり作れるから。楽しいよね。一日があっという間に終わるよね。ひとりの方が、仕事に満足して帰ります。

3年経つと、あなたは店長になっています。もう自分で何でもできるような気がします。しかし、自分の仕事を見てくれる同僚や先輩がそばにいて欲しいと思います。それを上司に伝え、希望が叶います。そこから本領発揮です。持前のリーダーシップ、責任感、愛嬌でどんどん集客します。売り上げも上がります。何でも任せられる後輩もできます。しかし、広告の仕事だけは自分ひとりで続けます。どうすれば売れるのか、どう見せるべきなのか、考え、形にし、反響を得ることに喜びを感じているからです。広告をもっと勉強したいと思います。独学でイラストレータを使えるようになります。簡単な広告なら作れるようになります。


仕事は順調に進む一方、あなたは恋愛に悩みます。好きになる人は自分を思ってくれません。たくさん傷つきます。傷つけることもあります。親に涙を見せたり、はじめてどなったりもします。そして、決めます。「環境を変えよう」と。ちょうど良いタイミングで人事部から異動の話がでます。希望の広告の部署に異動します。

異動を決めたその日に運命は決まっています。4ヶ月後、結婚相手に巡り合います。1年後、結婚します。専業主婦が夢ですが、あなたは仕事を続けます。大好きな旦那さんがあなたの能力をもっと伸ばすべきだと言ったからです。しかし1年後、仕事に行き詰まりを感じ、「文章講座」に通います。そこであなたは目覚めます。「書くことは、生きること」と教わります。「書くことを仕事にしたい」と思います。そうすれば、会社に左右されずに大好きな旦那さんのために、家をキレイにできると思うからです。夢を仕事にするため、人脈を広げます。縁があるところにどんどん出向きます。

同じ頃に子どもを授かります。男の子が生まれます。母になるとあなたの書きたい欲望は自然に強まります。仕事を休んでいる1年間、書いて書いてかきまくります。知り合った人たちから感想をもらい、また書きます。口コミであなたのエッセイが広まっていきます。そして、出版社から話がきます。旦那さんとよく話し合います。「ぜったいに家族を犠牲にしないこと」「本名はふせてもらうこと」それだけは固く誓います。あなたのエッセイ本は、瞬く間に広まります。それはあなた自身の話です。大学を卒業して、普通に地元に帰り、普通に就職して、とてもがんばったけど、恋愛だけはうまくいかない。そこで一大決心して環境を変え、幸せを手に入れた話です。女性からの共感を呼びます。子供たちに話をします。絵本になって海外にも出版されます。

そこであなたは思い出します。わたしは広告を作るのも好き、音楽もすき、絵もすき。芸術の世界にふみだします。旦那さんと息子と一緒に、ハワイに移ります。ハワイからブログを更新したり、エッセイを執筆したり、あなたのイラストがキャラクターになります。ハワイでは手作りのパン、野菜を作り、日本料理教室を開きながら生活ます。おばあちゃんになります。旦那さんと毎日、ワイキキの夕日を眺めながら散歩します。「幸せだね」と言います。涙が出ます。あなたに出会って、わたしは幸せしか感じていない。あの時、仕事を辞めないで良かった。あの時、協力してくれてありがとう。いつも応援してくれてありがとう。運命の人になってくれて、ありがとう。そして、、、