まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

感謝のキモチがいちばん強い。だから、やりたいことやろうよ!

ある人に会いたくて会いたくて、そのことばかり考えていた。前に会ったのは10日前。それなのに次に会うことばかり考えていた。なぜなら、元気をくれるから。悩みが悩みでなくなるから。

 
思い切って会社を休んだ。前日の夜22時頃だったが、彼女に思い切って連絡してみた。すぐに返事がきた。会える、とのことだった。
 
翌日13時、彼女はちょっと遅れて待ち合わせ場所にやってきた。しかも仕事着で。午前中に仕事があったらしい。予定を無理矢理押し込んでくれたのだろう。申し訳なかった。
 
予定通り、彼女のオススメのパスタ屋さんにランチに行った。車の中で彼女は「日本できっと一番美味しいから」と言った。店に入った瞬間、ほんとうにそうかもしれないと思った。狭い中に本格的なキッチンとカウンター。夫婦が営むそこには、平日にもかかわらず半分の席が埋まっていた。予定通り、うにとトマトの冷製パスタを注文。10分ほどしてでてきた。見た目、材料、食感。どれをとっても本格イタリアンとして値段の3倍は付いていてもおかしくなかった。それでもわたしは、パスタより彼女の話に夢中になった。謙遜しながらも、じぶんの人生を「奇跡だ」という。
 
ひとしきり笑わせてもらった後は、彼女のいつものお散歩コース、天満宮へ。その後、和菓子やさん、お豆腐カフェ。いつどのタイミングでも、彼女は笑わせてくれる。話の最後のフレーズは決まってこう。「だってわたし、これしかできないんだもん」常識的には迷惑なことでも、彼女がいえば彼女の常識で通る。それが痛快で笑えるのだ。
 
彼女の話をさえぎるのはためらいがあったが、思い切って聞いてみた。「どうして、そんな風に人に尽くせるの?あなたの得になるの?」彼女の口がかたまった。しまった、と思った。やっぱりやめておけばよかった。嫌われたかな。次に彼女は、少し悩みながら答えた。「うーん、幸せになってほしいからじゃない?」「前を向いてほしいから。それが私の幸せにもなるってわかっているから。」
 
彼女は言った。「わたしは何もできない。みんながプールの中にためてくれた水の中をすいすい泳ぐだけ。」これぞ感謝のキモチ。あなたのおかげでわたしは生きている。そう思える人こそがいちばん強い心を持てる。