まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

15年前のサバ味噌と定食屋のおばちゃん。

おばちゃん、今日旦那さんとサバ味噌定食を食べました。大学生でひとり暮らしをしてた頃、おばちゃんのお店でよく食べたことを思い出しました。あの頃、おばちゃんは言ってたね。食べるものは大事だから。親の元で過ごすことは大事だから、と。

今日食べたサバ味噌は、ちょっとしょっぱかった。誰が食べてもおいしく感じるように味を濃くしてあるんだね。でも、おばちゃんのお店で食べるごはんは、どれもしょっぱくなんてなかった。むしろ、塩分控えめだったよね。口さみしくないように、帰りに飴をくれたりしたよね。大衆受けする味がいいとは限らないもんね。

あの店には、お客様のことを思って作るおばちゃんのごはんを好きな学生たちが来てたよね。社会人になってからでも来る人もいたよね。東京の大学のウラにひっそりとある定食屋でも、知る人ぞ知るお店だからテレビの取材が来たり、おばちゃんがテレビに出る話もあったんだってね。でもおばちゃんはそれをすべて断わって、毎日来てくれる学生のために、と本業をおろそかにしなかった。おばちゃんが目指していたのは有名になることではなかったんだよね。

最近のわたしは、結婚して三年目に入りました。旦那さんとはとても仲良くしています。家事も分担し、休みの日には二人ででかけたり、いろんな話をします。この人に出会えて本当によかった。毎日幸せを感じています。けれど、旦那さんに甘えて、仕事に不満を持ったり、ちょっと有名になりたくて、たいそうな夢をもってみたり、今ある幸せの先ばかりをみていることに気づきました。わたしは、旦那さんとの幸せを一番に考えたい。おばちゃんを見習って、地に足をつけて、自分の大切にしていることを見失わずに生きていこうと、今日サバ味噌を食べて思いました。

おばちゃんが言っていた食の大切さ、家族の大切さは、ずっと忘れません。