まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

なんでわかったの?①


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妊娠中は、あんまりコーヒーが飲めない。カフェインがだめなのだと。1日1杯くらいなら大丈夫っていろんなサイトに載ってるけれど、やっぱりガマンできるものならしたい。ずっと続くわけじゃないんだから。

でもねでもね、どーーーーぉしても飲みたい時あるんだよ。3ヶ月前までコーヒーはランチ後のホッと一息、午後への戦力だったんだもん。

どーしても飲みたい。今日だけならいっか、とスタバへ。なんだか悪いことしてるみたいな気がして「ソイラテを…ホット…トール、あ、ショートで…」とぼそぼそ注文。

レジのお姉さんが大きな声で「カフェイン、大丈夫ですか?」と。え?  あ、カバンのマタニティマークが見えたのかな。それにしても突っ込んでくる人だな。「あ、はい、気にはなるんですけど、どーしても飲みたくて…」お客なのに、なんで言い訳しなきゃいけないの。はやく出してよ。と思っていたら…

「わかります!!!わたしもコレなんで!!!」と緑色のエプロンの下からぽっこり大きなおなかが。「あ!そうなんですかっ!」はじめてお姉さんの顔を見た。

「よろしければ、こちらとこちらのメニューにはカフェインレス90%のデカフェがあるんです。注文してから10分くらいかかるんですけど、今ちょうど出してるところなので、よかったら」とお姉さん。即答で「お願いします!!!」

「何ヶ月ですか?」「4ヶ月です」「あー
その時期はいちばん気になりますよね。頭痛とかありません?」「ありますけど…」「それ、コーヒーの禁断症状ですよ」「えぇー!」と言ってる間にコーヒーが。スタバのレジでコーヒーを受け取ったのは、はじめて。


トレイを受け取った瞬間、あれと思った。マタニティマーク、カバンの後ろに付いてた。お姉さんからは見えないはず。「あの、これ、見えたんですか?」「はい!ちらっと見えました!じぶんもこうなるまでは全く気にしてなかったんですけどね」


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その身になってみてはじめてわかること。たくさんある。わたしも今になって、電車の優先席に我が物顔で、これまで何度も座っていたことを後悔している。

ただ、このお姉さんのように同じ境遇の人に思い切って声をかけるかどうかと考えたら…。それでもわたしはこんなにいい気分でいられるのは確か。おせっかいかどうかなんて、考えるまでもなく、自然と手を差し伸べられる。そうなれるのは、自分がはじめてその立場になったとき。

いろんな境遇に陥ったり、辛い経験もするけれど、いつかその経験が誰かの役に立ったり、小さな幸せの手助けになれるかと思えば、悪くないかもな。そのときは、もう2度とイヤだって思うんだけど。


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帰りにお姉さんに「ありがとうございました。ひさしぶりにおいしいコーヒーが飲めました」と告げた。「あ、ちょっと待ってください!これ持って帰ってください!」と挽いた豆を20gくれた。「2杯分くらいにはなりますんで」と。


3日前の話なのに、今でも忘れられない。




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