まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

雨にも負けず、風にも負けないあなたに嫉妬します。満面の笑みの下で。

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雨のー。風に吹かれるー。

 

服もスニーカーもびしょびしょなのに、年に一度しかそこにしかないものを見たくて。

 

勢いはあったはずなのに、風の強さに負けて10分でUターン。それにしても、この天気なのに人の多さは予想通り。今週末を逃せば、来年はないのだから、考えることはみんないっしょだよね。

 

***

 

後ろから聞こえてくる声が日本語じゃない。これは日本人だけが楽しむものだと思っていたけれど、日本にいる外国人が見たいものでもあるんだな。

 

空が見えないくらい咲き誇っているものより、急に声の主が気になり出す。会話の端々から聞こえてくる単語はあかるく、雨だね、冷たいね、晴れていたらよかったのにねって感じではない。

 

同じペースで歩いているつもりだったのに追い越された。5歳くらいの女の子を肩車したお父さんとその友人と見られる男性。 どんな関係だろ。濡れたジーンズは気にも留めず、顔を見合わせながら笑い合う2人に女の子が言葉をかける。そのとき、肩車された女の子の持つ傘が風に吹かれた。キャーと怖嬉しい声が、花びらといっしょに飛ぶ。

 

年に一度しか見られない。そういうことなら、今のわたしのこの瞬間だって、きっとこの桜のように笑顔にする力があるはず。

 

今、この瞬間を楽しむ。女の子の後ろ姿を追いかける。今年の桜には、嫉妬を隠せない。

 

#京都

#背割堤