娘よ、年齢に自由であれ、選択に幸せであれ!
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理想の30歳は、母だった。
結婚して、専業主婦になって、子どもが二人くらいいて、それなりの生活をしている。ほわーんとではあるが、日曜日の朝に母が焼いてくれた、ふわふわのパンケーキのように甘くて、やわらかくて、幸せな感じ。
きっと、どうやったって、そうなるだろうと思ってた。だけど、現実の30歳はまったく違ってた。まず、結婚していない。予定もない。だから、専業主婦でもないし、子どももいない。その代わり、仕事には部下がいて、満足いくテリトリーは任せてもらえるようになった。実家暮らしだから、お金もある。旅行だって行ける。
さて、あの頃、一緒に旅をする彼氏はいただろうか。あぁ、いなかった。1年前くらいに別れた。3年くらいダラダラ付き合って、もうやめたほうがいいんだろうなとはじめて思って別れた。家に帰ったり、帰らなかったりを繰り返していたのに、何も言わなかった父に、別れたときだけ報告した。母がそうしなさいと言ったから。
30歳までもうすぐの娘が泣きながら、男と別れた報告をするなんて、今思っても、父はどんな気持ちだっただろうとむなしくなる。父がひと言だけ言ったのは、「相手がよりを戻したいと言っても許さない」と。それはきっと、「お前、ここまでしたんだから、もう振り返るなよ」とわたしへのメッセージだったのだろう。結局、相手から戻りたいなんてことはひと言もなく、私が想うほど、相手は想っていなかったんだと、その時はじめて気づくのだった。
母が30歳のときは、もう私も弟もいて、その2年後に妹が生まれる。「あの頃のことは覚えていない、毎日、無我夢中だった」と母は幸せそうに言う。大学生になる頃はまだ私も、母と同じように学生のときに彼氏ができて、そのまま結婚するんだろうなと夢を見ていた。まさか彼氏すらできず、30歳になっても男とうまく別れることすらできない女になっているなんて、想像もしなかったし、なりたくもなかった。なのに、そうなっちゃってる。
いったい何がいけないの? まじめに生きてきて、人を好きになっただけなのに、どうしてこんなに、むなしくならなきゃいけないの? 幸せのパンケーキを切望しているくせに、そこにたどり着くまでの道を探そうとはしなかった。まあ、いつか何かのタイミングでやってくるだろう。ちょっと道に迷っているだけ。パンケーキに足がついていて、私を探すのに手間どっている。泣いた3日後には、そんな風に思っていた。
それから後、これで決める! と思える人を友達に紹介してもらったけれど半年でダメになり、父よりも年上の相手とお見合い話がきたりした。お見合いの後、三件目の誘いを断り、帰る夜道が真っ暗で、「なにやってんだろ、私」と未来さえ、真っ暗になった。
30歳になれば、なんとなく思い描く幸せが待っているはずだったのに、それは母がたどってきた道のただの回想シーンで、私の道はまったく別にあった。最初から全然ちがうところを歩いていて、ゴールも違うのかもしれない。やっとそう思えた。そして私は家を出た。32歳だった。
ぼんやり見えていたはずの道は、はじめからなかった。どこに行くかわからないけれど、今、自分が立っている場所から新しく道を作ってみたら、思った以上に楽しくやれた。そこから1年でパンケーキ屋にたどり着いた。本当なら、母と同じ23歳でたどり着くはずだったゴール。結婚はゴールじゃないって友達に言われたけれど、私にとってはゴールだった。母のゴールではない、自分のゴールを決められたことが本当にうれしかった。
母とおなじ23歳で結婚のつもりが、32歳になった。
母とおなじ24歳で出産のつもりが、36歳になった。
それでも私は後悔してない。半分以上、強がりで、後悔したってどうにもならないから、そう言ってるだけ。だけど、今、横で寝ている0歳の娘が30歳になるまでに、ひとつだけはっきり教えられることがある。30年後はAIとか、地球環境とか、ものすごく変わっているんだろうけど、結婚、出産のような女性の悩みはそんなに変わってない気がする。なぜなら、一番身近にいる女性のお母さんがお手本になるから。お母さんと同じくらい幸せに、お母さんと同じような道を、逆にお母さんみたいにならないようにと、お母さん基準で考えてしまうから。
だけど、それは違う。けっこう回り道して、泣いて、傷つけて、はずかしくて、親に迷惑かけてからわかったことは、幸せになるのはお母さんじゃなくて、私だったってこと。私が幸せになったら、お母さんも幸せだったってこと。「お母さんのこと、大好きなのはすごくうれしいけど、どの道を選んでゴールにたどり着くかは、自分で決めていいんだよ。お母さんの年なんて気にしなくていいんだよ」娘には、これだけを伝えたいなぁと、パンケーキの味もまだ知らないわが子の横で思うのでした。
#年齢ってなんだろう
#期限なんてない
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