まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

なんで、お母さんは働いてるの?

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保育園の帰りに園長先生が言った。「ともちゃん最近、なんでーて聞きはりますね! 今日もね、お母さんに電話をする遊びの途中で、言わはったんですよ」

 

なんで、お母さん、働いてるのー?

 

「えー、なんでー?」2歳5ヶ月の娘の口ぐせが始まったのは、約1ヶ月前。うん、始まったね。そういうもんだよね。特に問題ではなかった。だって、質問がカンタンだったから。ちゃんと答えられたし。先生にも伝えた。

 

「そうなんですよ、家でもよく言うんですけど、適当なことは答えないようにしてて」

 

「そうですよね! 覚えてはりますもんね! 」と先生がたたみかけてくる。

 

そう、すんごく記憶してるよねぇ、わが娘。チョコレート食べたい、あとでね、お母さん、お皿洗ってるからね。30分後。チョコレート食べたい! あ、そうだった!

 

なんだけれども、ほかにもう一人いる。この私。言った本人が一番わかっている。その答えがウソかホントかってことも……。 

 

お菓子が食べたい、すべり台で遊びたい、スマホが見たい、次から次にわく子どもの欲望に対応しきれなくなった夫が、娘を煙に巻こうとしたことがあった。私はすかさず言った。

 

「流そうとしないで。ちゃんと覚えてるんだから」

そう、私が言ったんだ……。一連の流れを思い出して、保育園の玄関でかたまっていた。「うーん、そうだねー、いろいろ理由はあるけどねぇ」適当に答えてしまう。さっき、適当には答えないって言ったの、どこの誰だよ。

 

先生が流れを変えて、「じゃ、続きはおうちでー」と大きな笑顔で送り出してくれたけど、私は苦笑いしかできなかった。

 

晩ごはんを食べ、いつも通り二人でお風呂に入る。洗い場でアイスを食べる娘に向かって言ってみた。

 

「ねぇ、ともちゃん、お母さんが働いてるのはね……」

うん、とうなづき、まぁるいお目めでじっとこっちを見てる。アイスを持つ手も止まる。

 

「……お金のためと……好きなことをしたいからだよ」

 

うん、と娘はさっきと同じ対応。次のことばを待つように、まだアイスを口に持っていこうとはしない。私は恥ずかしくなって、

 

「お母さんは、書くことを仕事にしたいの、文章とか小説とかね、今はちょっと違う仕事をしているけれど、それはそれで好きなの」

 

なんて、情けない。結局、こんな答えか……がっくり頭を下げてシャワーで髪を流す私の背中越しに娘を感じる。それ以上は会話する気になれなかった。

 

翌日の土曜日も仕事。やりたいことではないけれど、それなりにこなせる仕事にでかける。毎朝通うスタバのお姉さんが今日で最終日だというので、手土産を持って顔を出した。40分後には休憩に入れるというので、待つことにして本を開いた。

 

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なんで、お母さんは働いてるの? - ALWAYS, LIFE IS A STORY

 

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ブログやSNSにも書かないこと。手書きノート。

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