まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

好きにしてください。

夫に言われて連続投稿を目標にしてから、今日で6日目だろうか。人のせいにしないと書き続けられない情けない自分と書こうと思えば書けるんだというプライドの高い自分の狭間で今も書いている。

「ブログ、今も、書いているんですか」もう4年近く髪を切ってもらっている美容師さんにふいに尋ねられた。これが1週間前だったら、「いやぁ、なかなか時間がなくて」とまったく面白くない答えを返していたはずなのに、たかが5日書き続けていたおかげで「はい」と張りのある声で答えた自分を好きになれた。

なぜ、その質問を投げてくれたのかまで理由は聞かなかった。それ以上の質問に濃い返答をする自信がなかったから。よく本を読む美容師さんで、いくつか話題の新刊の話になった。おなじく気になっていたので、帰りに美容院の目の前にある本屋に寄った。いつものヘッドスパを最後まで迷いながらケチったのは、ここでお金を使うためだった、と罪悪感を肯定する。

本屋の検索機の前に人が立っていたのを理由に、本屋をぶらついた。こんな一人の時間も夫が家で娘と晩御飯を食べてくれているおかげだ。お目当ての本は、なんとなく一階にはなさそうだったのでエスカレーターで二階にあがる。フロアを見まわして、またなんとなくここでもなさそうだとさらに上の階へ。

さすがに無駄な時間に思えて、空いている検索機の前に立つ。どうやら4階にあるようだ。ここまで上がってきたことがムダではなかったと気持ちが明るくなった。上りのエスカレーターの前に、ある名前を見つけた。数日前、朝の情報番組にゲストとして出ていた作家さんだった。同年代であること、書いているテーマ、雰囲気、生活ぶり、ステータス、どれにも嫉妬した。

おなじ本の表紙に別の名前もあった。「村上春樹

川上未映子さんが村上さんにインタビューしたことが本になっていた。

くやしい。くやしい。めくってすぐに出てくる言葉に引き込まれる。めくっても、めくっても。あまりにも悔しすぎて、レジの前を三回横切って、買うのをやめようとしたが、やめられなかった。

村上さんの書くことについて考えていること、言葉選び、「動く文章」というフレーズ、どれもどれも、好きだ。書くことを仕事にすることを目標にしていいんだ、書くことってやっぱりかっこいい、文章なんて誰にでも書けることでお金をもらうなんて私にできるのかといまだに迷っている私に、今日は、この本のためだったんだと、打たれやすい私は興奮している。

真っ暗な部屋で娘を寝かしつけながら、夫に一連の経緯を話した。中でも、どこまで書くかを勘に頼っていること、何度も何度も書き直していたら、もうここまでという場所に行きつくこと、それが自分なんだ、という内容を話している部分を帰りの電車で読んだばかりで、そこがすごくわかる自分がうれしかったことを伝えたら、夫がレオナルドダヴィンチの話を始めた。

40歳から知の爆発があったこと、一つの絵の完成までに20年かかっていること、解析したら驚くほどの書き直しがあること、当時はないはずの染料が使われていることなど、夫は私が熱く語っていることは、あのダビンチにも似ている内容だと言ってくれているのだった。

そして最後にこう言った。

「好きにしてください」

うんたら、かんたらうんちくを垂れるのも聞いてくれるし、最後はそんなセリフがでてくるなんて、なんて人なんだよ、もう。

という結果、おのろけみたいな話になってしまったのだけど、これで今日も連続投稿ができた、ことになるのだから、夫を喜ばせられると思えば、私もうれしい。

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