まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

My life is 超difficult.

「むずかしすぎる」

高二の時、国語のテストに赤ペンで書かれたそれを見て、はぁ? の後にひどくがっかりした。今でもそれはトラウマになってて、私の人生をあらわす代名詞になってることに昨日気付いた。それ、努力じゃないよ、準備だよ。

テスト問題は詳しく覚えてないけど、これに対する見解を自由に書けみたいなもので、A3横の3.4行くらいの空白にびっしり書いた。

その頃からずっと好きで読んでいる心理学の本のいい回しに似せて、学者みたいな気分だった。何度も何度も消しゴムを使っては、これはこういった方がかっこいいし、とか思ってた。

たしかに難しい言い方のような気もしていたけれど、国語で自由に書けって言われてるんだし、答えは一つの穴埋め問題よりも闘志が湧いた。当時、心理学の本を読み漁っていた自信のない私にとって、誰にも見られずに優越感に浸れる場所な気がして解答が待ち遠しかった。

それなのに、難しくて理解できないだと。いつもぼやっと板書するだけの先生のくせに、こんな時は厳しくて1点のオマケも付けてくれなかった。

やっぱり私は理解されないんだ。やっぱり、やっぱりそうなんだ。小学生くらいから持っている得体の知れない悲しみ。着たい服も、聞きたい音楽も、言いたい言葉も私が直感で選ぶものは反対される。バカにされる。必死で隠してきた。だけど心の底では理解されたかった。

この気分は、まだ一度もリングに上がっていないのにボクシングのマニュアルだけめちゃくちゃ読みこんで、ウォーミングアップの最中にちょっと変わったパンチを試して突き指した選手みたいにザンネンな感じだった。(ちょっと比喩が長いけど、ほんとそんな気分)

つまりさ、イタイんだよね。突き指くらいの軽いケガでも、私はイヤだった。それくらい弱いの。すぐに折れるの。理解してほしい、私を理解してほしい。誰か、たった一人でいい。彼氏にもずっと思ってた。そんな恋愛は、もちろんうまくいかなかった。誰かに自分の価値を求める人間は弱いんだ。

難関を乗り越えることで武装した。ほら、こんなにすごいでしょ、こんな難しい問題も解ける、有名私立大学への推薦も取った。私はこんなにすごいんだからと思うことで、理解されない悲しみはなかったことにしていた。私の人生は簡単じゃない、難しいんだ、あんたたちよりも価値があるんだって。バカは理解できないでしょって。

あはは。笑えるね。私がわたしを理解していなかった、それだけだったのに。すべては自分の思い込み。先生や彼氏を怒る前に、自分には価値がないって思ったのは誰? その価値は誰が付けるの? 他人? それじゃあ、ずっと満たされない。

世界チャンピオンになったボクシングの選手は、誰かに認められるためにやってきたの? なぜ生きるの? 私がわたしを認めたいから。私を認めるために価値が必要なの? そうなの、わかってる。人の理解は後から付いてくればいい。まずは私がわたしを理解しようよ。わかってる、本にもそう書いてあったし。

何かしないと存在していられない自分は苦しい。もう苦しいのはイヤだ。いつもビクビクしているのもイヤだ。友達を心の底ではバカにするのもイヤだ。もう、やめたい、難しい人生。

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