まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

人を大切に。

行き当りばったりの週末の外食。たまにメニューに困る。そんなときは、いつものお店に落ち着く。意見を出す気のないわたしに、主人がひと言。「あのうどんやはどう?ひさしぶりだし」「うん、そうだね」とわたし。意外とすんなりなり決まった。

 

あのうどんやとは、竹田にあるうどん屋「大河」。二度目の登場。専用の駐車場はなく、京阪「藤森」駅から徒歩10分。決して便利ではない場所。しかし、今日も店は混んでいた。カップル2組、女性同士1組、会社の同僚と見受けられる男性3人組で店内は満席。讃岐うどんに魅せられた店主とその気概を受け継いだアルバイト4名と釜から出るゆげで、むんむんしていた。約15種類のメニューの中から、迷いに迷って選んだ。今日は、たっぷりのカレーうどんと、鰹と鶏肉のだしで食べるつけ麺。うん、今日もおいしかった。ごちそうさまでした。

 

ここで考えた。また行きたいお店とそうでないお店。何が違うのか。その答えが見つからないまま、帰宅。たまたまつけたテレビで、世界が誇る日本人スペシャルをやっていた。バチカン司祭が認めた彫刻家、世界で唯一の手作業で作る絹職人など。番組の最後に彼らの宝物について質問があった。皆、同じ答えだった。「それは、人。自分ひとりでは絶対にここまで来れなかった」

 

さっき出せなかった答えだった。また行きたいと思えるお店は、わたしを大切にしてくれる。つまり、人を大切にするお店。例えば、ちょうど良いタイミングで注文を取ったり、食事の感想ををさりげなく聞く。お客様を外まで見送る、など。店員のひとつひとつの言動が気持ちがいいのだ。

 

人を大切にする人には、人が集まる。わたしもそんな人になりたい。改めて思った。何の記念日でもない外食で、こんな気持ちにさせてくれた「大河」さん。ありがとう。また行きますね。