まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

雨。

雨が降っている。朝からしとしと降っている。会社のまどに打つ雨跡から想像するに、昼の今は、ぱらぱらか。まだ続きそうだ。今朝は新しい世界の広がりを感じた。しかし、会社という城塞に入ってしまえばそんな夢の世界から引きずり下ろされる。お前はここだ。ここにいるべきだ。お前に何ができる。無茶はよせ、恥ずかしいぞ。と誰かが言ってくる。

休憩室のテレビから、有名グループの元メンバーが麻薬で逮捕のニュースが流れた。おとといも似たようなのを見た。麻薬。小学生の頃好きだった、二人組の男性歌手も逮捕されたっけ。脚光は麻薬なんだな。その高揚感を再び味わいたくて手を出すんだろう。怖い。他人事ではない。認めたくないものを認める勇気が欲しい。もうあの頃の栄光はないが、家族がいる。もうあの頃のお金はないが、友がいる。どれもしっくりこない。悲しいが、家族も友も自分の心を満たしてはくれない。

自分の気持ちは、じぶんでどうにかするしかない。と考えれば「お前なんて虫ケラ同然」の悪魔の声でさえ「あぁ、そうっすよね。そうかもしれないっすね。でも、やらなきゃわかんないじゃないっすかー」と金髪ロンゲの兄ちゃんみたいに軽くあしらえそうな気がする。それは、雨を降らせる雲がふっと晴れて光が漏れる瞬間。

雨もいつか上がる。そして、また降る。また上がる。人生も自分の気持ちも繰り返し。麻薬に溺れたとしても、更生できる日がくるかもしれない。迷いながら進んでいけばいい。城塞の中で閉塞感を感じる私も、外から見れば兵隊に守られた自由な女中なのだから。飛び出す日は、いつかくる。その時、雨は降っているだろうか。