まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

わたしのはじめての冒険 ~婚活パーティで旦那さんと出会い、結婚するまで~

32歳。両親とも仲良く暮らし、友達もたくさんいる。 仕事も順調。たった一つの悩みは、結婚相手に巡り会えないこと。
 
職場の懇親会で人事部長が「本社にでも出てくる?」と軽く言った。ため込んでいた気持ちがそこではじけた。半年後、わたしは京都行きの新幹線に乗っていた。 友人たちは「どうして?京都には友達もいないのに?」と不思議がった。
 
何の迷いもなかった。 思い返してみれば、これが生まれて初めて、人生を変える選択をした日だった。 福岡に残す両親のことは気がかりだったが、その思いを振り切った。

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京都に来てからの私は生き生きとしていた。4ヵ月後、後輩に誘われ婚活パーティに参加した。男女60名ずつ。あっという間に時間が過ぎ、終了まであと少し。良い人が見つからないまま、諦めかけていた時、一人の男性が目の前に立った。 彼はわたしが数ヶ月前に福岡から出てきたこと、今この場にいることの偶然を、自分のことのように興味を持ってくれた。そして最後にガッツポーズをした。
 
「あなた、何か持ってますね!」
 

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また何かがはじけた。フリータイムで彼を探し、「この後の告白タイムであなたを指名しても良いですか?」と聞いてみた。彼は、驚いた様子で「いいですよ。」と言った。 「よかった…」
 
 
安心しきっていた。まさか、他の女性が先に彼を指名するなんて考えもしなかった。それがまさに起こった。壇上に見覚えのある男性。頭の中は真っ白。「告白しようと思っていたのに…」と驚きのあまり、ひとり言をつぶやいた。
 
 
それを聞いていた隣の女性が「え!それはダメだよ!さあ早く!」と強引にわたしの手を取り、彼の前に引っ張っていった。それには彼はもちろん、周りもびっくり。司会者も唖然としていた。しかし、すぐに気を取り直した司会者が「これはすごいことになったぞ!さあ、どうする?」と彼に二人の女性のどちらを選ぶか迫った。
 
 沈黙。5秒。10秒。
 
「恥ずかしい!こんなはずじゃなかった!」と思っていたその時、スッと手を引かれた。彼は約束通り、わたしを選んでくれた。

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その日から1年後、2013年9月15日。 わたしたちの結婚記念日。わたしは気づいた。あのときはじけたのは、気持ちだったんだ。その気持ちに素直になれば、まわりの人が助けてくれて、自然と幸せはやってくるんだ。そんなわたしを、少し離れたところから両親がうれしそうに見つめてくれていた。
 
 
〜あとがき〜
実話です。昨日、主人の職場の方々とのクリスマスパーティでひさしぶりに2人の馴れ初めを聞かれ、 話しました。もう4年も前のことなのに、今でもあの時の緊張感、不思議さに心がふるえました。聞いてくれる人も、「なんかゾクッとしますね」と言ってくれて。
 
この話がさらにご縁を結んで、昨年のクリスマスに、プロの方に朗読していただきました。その時の様子はこちら。
その場で号泣する方もいて。自分のことなのに、聞いててウルっとしました。あらためて、伝えることのすばらしさを実感した日です。