まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

体験したいを体験する場所、地球。

「目覚めたら、怖いことが起こる」と誰かが言った。

それは、「甘い物ばかり食べたら、虫歯になるよ」「そんなにお金を使ったら、なくなるよ」とおなじ意味で、心の奥にへばりついている。

私たちは制限の中にいることで、偽の安心感を持つよう設計されたロボットだ。人間だと思い込んでいるが、人間ではない。


目覚めた意識で生きることが、ほんとうの人間なのだとしたら、それはとてもとても怖いことで、とてつもない勇気がいるように完全な意識を封印して、私たちは赤ちゃんとして地球に誕生した。



寿命という制限、お金という制限、時間、気持ち、人間関係。すべてトリック。幻。スクリーンに映し出された「できない」を体験するためのセット。主人公が苦難を乗り越えて幸せになるストーリーが大好きなのは、そうプログラミングされているから。


簡単はおもしろくない。なんでもできたら、やってる意味がない。比較、差別が偽の快感を生む。


なんてめんどくさいことをやっているんだろう。なんて難しいプログラムを組んだんだろう。それならば、何にも疑わずに生きていたかった。幸せだけを感じて生きていたかった。「何かがちがう」と実態のない不満を抱えるようにも仕組まれているんだろう。


「生きるってめんどくさい」といつか母が言った。そうかもしれない。自分で仕組んで、解き方を忘れた難問に挑む。魔法が解けたら、そこにこそ桃源郷が待っているのだが、そこにたどりつくまでには無限とも思えるトリックがある。


体験したいを体験する場所、地球。


そこに今、あたらしいウィルスが出現した。これも、誰かの体験したいが集まった映画の一幕。苦難にしなければ、戦う意味がないと思い込んでいる私たちは、これでもか、これでもかと敵を送り込んでくる。


決して大きくはないはずの敵なのに、見えないだけで怖い。答えがないものが怖い。すべては地球の波動。そこに生まれてきたのだから、大人しくそこに骨を埋めればいいものを、なぜかあがきたくなる。


あぁ、めんどくさい。


この感情も捨てていこう。


春分の日まで、あと7日。