まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

大丈夫、そのひと言が欲しいだけ。

「あら! そんなにそって! 中森明菜やん!」

看護師さんのひと言に救われた。

笑いって大事。

晶子がNICUを退院して2週間後の初外来。晶子は脳の影響と言われる体のソリがすごい。強制するためにリハビリもしている。だけど、なかなか治らない。

今日のために数日前から緊張したていた。あわてないように、夫を急かさないようにとは思いつつも、

何を言われるのか、

聞きたいことはあるけれど、どれも不安を大きくするだけで口に出したくないようなことばかり。

6時のミルク、搾乳、長女のお弁当作り。ふだんとおなじ朝だけど、この後に待つプロセスが頭から離れず、呼吸が浅くなる。

そんな時に限って、長女が泣きながら起きてくる。隣にいるはずのお母さんがいなくて、お父さんの足があったから。

寝ぼけ顔できょとんとしている、ともちゃんがかわいくて笑ったら、機嫌をそこねちゃった。こんなときの笑いはよくないね。

そんなお姉ちゃんをなだめつつ、送り出し、病院へ行く準備。こないだはスマホを忘れたから前日からメモしておく。

酸素、吸引機、オムツ、おしりふき、着替え、私のお茶、タオル、財布、母子手帳……

夫があせりぎみの声で「すこし早めに出たいんだけど…」という。遅れないように気をつけているんだろう。

「大丈夫よ、10時30分から11時までに行けば大丈夫だから、ほら」と予約表をみせると安心した様子。

あせるとパフォーマンスがでない夫への薬。大丈夫。誰にとってもそうなのかもしれないね。

さて。

小児科と脳外科の予定。ぶじに到着。だけど、はじめてだし、知らない人たちがこっちをみてる気がする。そんなときに看護師さんの「中森明菜みたい」発言。髪を黄色系にそめた、孫がいるであろうと想像できる雰囲気。まさに当たりだった。

中森明菜は知ってますけど、ソリとイコールにならないんですけど…みたいな反応をしたら、

「ごめんね〜、ふるくて」とお決まりの返し。

その後も、晶子のすんごい背筋パワーにも、

「あら! すごい! 生きる力だ!」と。

気持ちが軽くなるってこーゆーことだよね。だから、私はお笑いがすき。

ふだんから、お笑いの精神を忘れたくないね。

それから「大丈夫」のことば。自分に言ってあげたい。周りの人にも。根拠はないけれど。私たちはその言葉が欲しくて、お医者さんにもたくさんの質問をした。

だけど、お医者さんからは返ってこないよね。だって、わからないんだもん。どーなるか。赤ちゃんだしってのが最大の理由。これから成長していくから。オトナじゃないからって。

それなら。

それなら、大丈夫って思いたい。笑って、「ソリがすごい!」「生きる力だ!」と言って生きていきたい。

そんな日になりました。

ありがとう。

言葉の魔法。