告白します。私がヨガを教えながら見ているのは、あなたじゃないんです。
タイムマシンがあるなら、昔の私に言ってあげたい。
「大丈夫。いつか自分を信じられるときがくる」
「……っていうか、あんた誰?」
冷めた目をして、思春期ど真ん中の私は言うだろう。
「自分を信じる? ダサくね? 未来? よくわかんないんですけど。今でさえ精一杯っていうか、何も楽しくないのに何が未来? 未来になんて自分になんて、期待してないから!」
心の底では叫んでた。
「誰か私を見つけてよーーーーーー!」って。
さみしかった。でも強がるしかなかった。周りを見れば落ち込むだけ。
隣の芝生は青いなんてコトワザ教えてもらったって、何にも響かない。じゃあ、どうしろって言うの?
人と比べないなんてムリに決まってるでしょ。
本当は注目されたい。私はこんな人です! って言える自分になりたい。でも傷つくのはイヤ。バカにされるのもイヤ。
どうしようもない気持ちが今にも爆発しそうなのに、そこにいない人みたいに気配を消して、ただ毎日が過ぎていくのを待った。
10年たっても、社会人になっても世界は何も変わらなかった。大人になればなるほど、人生は退屈になるものだと思っていたし、まさにその通りになった。
職場と家の往復。休みの日は一日中寝てたい。なぜかいつも忙しくて、仕事やプライベートのモヤモヤを消化する余裕もない。だから、いつも情緒不安定。
つまらなさすぎる。どうにかしたい。でも何をどうすればいいのか、わからない。
心の奥底で「はやく見つけて」と叫ぶ小さな自分をずっと無視し続けた。そんなもの見つけても仕方ない。見つけたところで、めんどくさいだけだし。押し込めようとする程どんどん大きくなっている気もした。
そんな時、ふと目にとまったオンラインサロンを知らせるブログ。
「なんか、おもしろそう・・・・・・」
きっかけは、それだけだった。その時の心の重さに比べたら、片手でスマホをポチッと押すなんてカンタンなことだった。
でも今思えば、はじめての行動だったんだ。「なんか楽しそう」とつぶやいた自分の声に耳を傾けてあげたのって。
半年後、「さき、なんか別人になったよね」
友達に言われた。自分でも驚いている。たくさんの仲間に囲まれて、やりたいことが見つかって、休みの日も外に出る。とにかく体験したい! やってみたい! 未来が明るい!
あの冷たい目をしていた私が、今こんなことを思っているなんて自分でも照れくさい。だから私は友達にこう返す。
「そうかなぁ?」
ちょっと感じ悪かったかも。でも私は変わってなんかいない。ずっと昔からいた私が外に出てきただけ。
ノリだけで入った環境には今まで出会ったこともない「楽しむ大人たち」がいて、スネてばかりの子どもみたいな私に対等に接してくれた。それがとてもうれしかった。
彼らはいつも楽しそうだった。それがとてもまぶしくって、あんな風になりたいとはじめて思った。
「もっと人生を楽しみたい」
私の願いはずっとそれだけだった。でも、どうすればいいのかわからなかった。口に出すことすらできなかった。
あの人たちと私の違いは何? それはすぐにわかった。カッコイイ大人たちは、人生の舵を自分でにぎっていた。そして、簡単にやりたいことを口に出していた。そんな大人たちをボーっと眺めていた私は、家に帰ってひとり言をつぶやいた。
「私もやってみたい」
別人になったと友達が言うのなら、もしかしたらあの時、目や口が付いている外側の私がはがれて、心だけが残ったのかも知れない。
自分と周りを比べるだけの目はいならい。グチしか言わない口もいらない。必要なのは、心。何を望んでいるのかわかれば、その通りに人生の舵取りをすればいいだけ。
じゃあ、どうやったら心の声が聞こえるの? ノイズに心が乱されないようにするには、どうすればいいの? スマホをポチッと押したあの時みたいに素直な私のままで、ずっといるにはどうしたらいいの?
本当にフシギな話なんだけど、自分から逃げてるときは何にもやってこない。やってきているかもしれないけど何も感じない。
こわいけど自分に向き合ったら、がんばらなくても欲しいものが向こうからやってくる。私にとって、それはヨガだった。
ヨガは教えてくれる。辛いこと、思い出したくない過去も、すべて心の中にある。それを否定しない。まあるいオレンジ色の光で暖かく包んで、ふうーっと吐き出してあげる。肩の力が抜けていく。
すると、真っ暗で何も見えなかったところに明るい光が差し込む。全身の力がぬけて、ふわふわ浮いている。気持ちがいい。
心は見えないけれど、そこにある。生まれた時からずっとあなたと共にある。
昔の私は、心を知らなかっただけ。目に見えるものばかりにこだわって、かたくなっていた。心は「このままじゃ、つらいよ」と叫んでいるのに、聞こえないフリをしていた。
だって、見えないんだもん。
こわいんだもん。
あたらしい世界に飛び込んで対等に接してもらえたとき、その怖さはなくなった。その代わり、認めてもらえた喜びが生まれた。
それから私は導かれるように、ヨガの先生になった。少しずつではあるけれど、定期的にクラスも持てるようになった。
「なんか軽くなった」
「また来たい」
そう言ってもらえる度に、私はちょっと申し訳なくて心の中でささやく。ありがとう。でも私がヨガを教えながら本当に見たいのは、あなたじゃないんです。
私が見ているのは、あなたの心。
「ほら、そこにあるよ」
どうしようもなかった自分でも認めてもらえた、あの喜びをあなたにも伝えたい。大丈夫。
あなたの心は、あなたの味方。怖がらないで、聞いてごらん。小さく縮こまった心の中じゃ、羽は広がらない。大きく深呼吸して。もっと自由に、羽を広げて。あなたの人生の舵をとっていこう。
「大丈夫。あなたも自分を信じられる。心の声に耳を傾けさえすれば」
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友人をエッセイにしてみました。
平田紗希ちゃんのヨガをはじめて受けてたときのことを思い出しながら書きました。
呼吸や瞑想が特に印象に残っています。
あなたにも「心の脱力ヨガ」おすすめします。
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