まいにちワンダーランド

~過去をはき出し光に変える毒出しエッセイ~森中あみ

【悪用厳禁】ライティングは遺伝子操作レベルかもしれない。

リビングにあるテーブルで、母親がよくノートに予定を書き込んでいた。誕生日には、小さな便箋に手書きの文字とイラストで手紙をもらった。誰かへのお礼のハガキも母親はよく書いていて、私の遺伝子はそこにあると最近、つくづく感じる。ただし、それを使いこなすには幼き私には時間が必要だった。

自我が芽生えた小学校高学年あたりから、自分の気持ちを声に出して相手に伝えることが苦手だと感じ始めた。

どうしても消化できない気持ちを、「明日の朝、靴箱で言ってやる」とお風呂の中でセリフを練習したこともある。結局、想像したシチュエーションにはならず、風呂場での練習時間はまったくのムダになった。

中学二年生の時に転校を経験した。友達に嫌われるタイプではなかったはずなのに誰に話しかけてもそっけない返事しかなく、次第に話しかけるのも怖くなり、最終的には「みんなに無視される」と毎晩泣いては家族を巻き込んで心配させた。

もうやっていけないと意を決して、一番話しやすい友達に悲しい気持ちを打ち明けたら、その日からウソのように友達の態度が変わり、私は笑顔で中学を卒業した。

それでもまだ自分の気持ちを外に出すのは苦手で、高校に入ってからも、勉強もできておしゃべりも上手な女の子に「私のこと、キライ?」と突然、顔を近づけて言われたのは忘れない。キライというより、むしろ尊敬しています、と言いたかったのに「え、ぜんぜん」としか返せず、きっと彼女は今だに私から嫌われてたと思っているかもしれない。ごめんなさい。

一人暮らしを始めた大学生の頃、おしゃべりが苦手ではなくなった。生きていくためのコミュニケーションを必然的に取らないといけなくなったため、東京に住み始めて半年後には「私、しゃべれてる」と、にやけながら駅から大学までの道を歩いたのを覚えている。

それからお酒のチカラも借りた。ハタチを過ぎた一人暮らしの東京生活。ドラマのような世界はこれっぽちも経験しなかったけれど、言葉の防波堤が崩れてあふれ出す感覚はとても気持ちよかった。だが、翌朝には「あんなこと言わなければよかった」と後悔し、本当の本当の気持ちは言うとかならず後悔するからやめておこうと固く誓うのだった。

社会人になっても、30歳をすぎても、「本当の気持ちは言ってはいけない」私の勝手な約束は守られ続けた。

気持ちを出さないことが私の人生を左右しているとは気づかないまま、「結婚」を決意した私は、またひとり暮らしを始めて人生を変えようとした。実家の自室で引っ越し準備を進めながら、目についたノートに「私を一番にわかってくれる人と結婚する」「京都で婚活パーチ―に行く」とうすい鉛筆でなぐり書きをした。どうしようもなくなった時、ノートに気持ちを書きなぐるのがクセだった。

その3ヵ月後に夫になる人と婚活パーティで出会い、1年後に結婚することになっても私はまだ「文字」や「書く」ことと自分の人生を結びつけることはなかった。

私のことを一番に理解してくれる夫は、子どもを作る前に京都に出てきたばかりの私には友達が必要だからと、何かコミュニティに入るのを勧めた。年齢的にも早く子どもが欲しかったが、仕方なく何かないかと探しているところに駅前でもらったチラシに「仕事で使えるライティング講座」とあり、ピンときた。

職場で大量のメールの文章をやり取りしながら、「どうもしっくりこない」「伝わっている気がしない」と感じていた。仕事でつかえるなら、と飛び込んだ朝活ライティングの初日、ついに出会ってしまうのだった。

人生を変えるライティングに。

「わたし、こんな風に思ってた」

夫にすら、ずっと封印してきた気持ちがさらっと自分の中から出てくる感覚。

体から力が抜けていくようだった。それから私は、気持ちを文字にすることにハマりまくり、ライターを目指し、ブログを書き続け、今や職業としてそれを誰かに教えている。

まさに人生が変わってしまった。

娘が欲しいと思った元旦、ホワイトボードに書いたら2月には妊娠がわかった。次女の時も、ホワイトボードやノートにも書きまくったら、ベストタイミングでやってきた。

なんということでしょう。

あの日、ライティング朝活に行かなければ、いや夫に出会わなければ、いや引越しの前日にノートに書かなかったら、いや母親が書く人でなかったら、どこまでさかのぼればいいんだろう。とにかく私の側には最初から書くシチュエーションがあり、それを人生の目的にするまでに多少の時間がかかり、でもその時間がなければ、ここまでの熱量で書くことはできず、すべては必然だった、そう思えているのはやはりライティングに出会ったからだとまとめるしかない。

ライティングに出会わなければ今、何をどうしていたんだろう。夫にも会わずに、子どもにも出会えずにいたんだろうね。明らかに人生の方向転換をしてくれたライティング。これはわたしの人生を遺伝子レベルで操作したと言える。

もともとあった遺伝子を覚醒させたのがライティング。

文字を書くのが当たり前だったために、文字に救われる人生になると考えたことはなかったし、文字は私にとって空気と同じレベルでいつもそこにあるものだった。

あなたの前にもありますよね、きっとそこにあるもの。当たり前すぎて見過ごしているもの。それは、今までと同じように生活していても残念ながら気づきません。夢を夢のままで終わらせない、ずっと思い続けている野望をなぐり書きでもいいから、ノートに書き綴ってみましょう。始まりはそこから。

新たに見つけるのではなく、あなたの中にあるものに気づく。

ゲノム編集なみに効果のあるライティング。悪用厳禁。ただし、一度取り付かれたら、もう後には戻れないよ。お覚悟を。

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